不動産の売買では、売る側がプロ、買う側が素人という組み合わせが普通に起きます。知識も情報も釣り合っていないので、民法のルールだけに任せると素人が一方的に不利な契約を結ばされかねません。そこで宅建業法は、業者が自分で売主になるときに限って、民法より厳しい縛りを8つかけました。これが8種制限です。
裏返すと、プロどうしなら守る必要がない。だから業者相互間の取引には適用しない、と法律がはっきり書いています。8つを個別に覚える前に、この一本の筋を先に入れてください。どの縛りを思い出すときも、必ずここに戻ってこられます。
図1:3つそろったときだけ働く
8種制限が働くのは、売主が宅建業者で、買主が宅建業者でないときの売買に限られます。業者相互間の取引には適用せず、業者が媒介・代理で関わっているだけのときも対象外です。
| 縛り | 条文 | 扱うタブ |
|---|---|---|
| 自分のものでない物件を売る契約の制限 | 33条の2 | ④ 売れない・責任 |
| クーリング・オフ | 37条の2 | ③ 契約を外せる |
| 損害賠償額の予定等の上限 | 38条 | ② お金 |
| 手付の額の上限 | 39条 | ② お金 |
| 契約不適合責任の特約の制限 | 40条 | ④ 売れない・責任 |
| 手付金等の保全措置 | 41条・41条の2 | ② お金 |
| 割賦販売の解除の制限 | 42条 | ④ 売れない・責任 |
| 所有権留保等の禁止 | 43条 | ④ 売れない・責任 |
8つの縛りは、条文の上では33条の2と、37条の2から43条までに並んでいます。バラバラに見えますが、狙いは全部同じで、素人が損をする形の契約を先回りして封じることです。このノートでは、性質が近いものをまとめて3つのタブに分けました。
8つの縛りのうち、お金に関するものが3つあります。手付の額の上限、損害賠償額の予定等の上限、そして手付金等の保全措置です。狙いはどれも同じで、買主が先に払ったお金を、取り戻せなくなる事態から守ることにあります。
不動産の売買では、契約から引渡しまでに何か月も空くことがあります。その間に売主が倒産すれば、買主は物件も手に入らず、払ったお金も戻りません。この「二重に失う」形を防ぐのがこの3つです。
手付として受け取れるのは、代金の20%までです。禁じられているのは「超える額」なので、20%ちょうどは適法です。
| 手付による解除 | 内容 |
|---|---|
| 性質 | 名目にかかわらず 解約手付 として扱われる |
| 買主は | 手付を 放棄 して解除できる |
| 業者は | 倍額を現実に提供 して解除できる |
| いつまで | 相手方 が履行に着手するまで |
契約が守られなかったときに備えて、あらかじめ賠償額を決めておくことがあります。これを損害賠償額の予定といい、違約金と合わせて代金の20%を超える定めはできません。
ここで大事なのは無効になり方です。定め全体が無効になるのではなく、20%を超えた部分についてだけ無効になります。他の縛りは「買主に不利な特約は無効」とまるごと効力を失うものが多いので、ここだけ扱いが違うと覚えてください。
図2:保全措置が要らない範囲
買主が引渡し前に払うお金を 手付金等 といいます。契約の日以後、引渡し前に支払われ代金に充当されるもので、中間金も含みます。基準は図2のとおりで、割合と金額の両方を満たしたときだけ保全措置が要りません。使える方法も、完成しているかで変わります。
| 保全の方法 | 未完成 | 完成 |
|---|---|---|
| 保証委託契約 | 使える | 使える |
| 保証保険契約 | 使える | 使える |
| 指定保管機関に預ける | 使えない | 使える |
| 場面 | 数字 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 手付として受領できる上限 | 代金の 20% | 「超える額」が不可。ちょうどは適法 |
| 損害賠償の予定+違約金 | 合算で代金の 20% | 超えた 部分だけ 無効(全体ではない) |
| 保全措置が不要(未完成) | 代金の 5% 以下 | かつ 1,000万円 以下。両方満たすときだけ |
| 保全措置が不要(完成) | 代金の 10% 以下 | かつ 1,000万円 以下 |
| 所有権留保の限界 | 代金の 30% 超 | 手付の20%と混同しやすい |
買主が冷静に判断できない場所で契約させられることがあります。街で声をかけられ、そのまま喫茶店で申し込んでしまう、といった場面です。そこで法律は、落ち着いて考え直す時間を買主に与えました。これがクーリング・オフです。
判断の軸は2つだけです。どこで申し込んだかと、いつまでか。この2つで結論が決まります。
図3:どこで申し込んだかで決まる
撤回できるのは 8日間。数え始めるのは業者から書面で告げられた日からで、契約した日でも申し込んだ日でもありません。撤回は書面で行い、効力は 書面を発した時 に生じます。次の図で、数え方をまとめて確認してください。
図4:8日の数え方
期間内でも撤回できなくなる場合があります。買主が引渡しを受け、かつ代金の全部を支払ったときです。両方そろって初めてできなくなるので、引渡しを受けただけ、代金を払っただけなら、まだ撤回できます。
撤回したときの効果も押さえてください。業者は損害賠償も違約金も請求できません。受け取っていた手付その他の金銭は速やかに返還しなければなりません。これらに反する特約で買主に不利なものは無効です。
残る4つは、狙いが同じです。買主に不利な特約を結んでも無効になる——契約書に書いてあっても効かない、という形で買主を守ります。何がその4つかは、下の表にまとめました。
| 縛り | 覚える数字・条件 |
|---|---|
| 自分のものでない物件 | 原則売れない。取得する契約があれば可。ただし停止条件付きは除く |
| 契約不適合責任 | 通知期間を引渡しの日から2年以上とする特約は有効。それ以外で買主に不利なら無効 |
| 割賦販売の解除 | 30日以上の期間を定めて書面で催告 |
| 所有権留保 | 代金の30%を超える支払を受けるまでは留保できる |
業者は、自分の所有に属しない物件を、自ら売主として売る契約を結べません(予約も含みます)。手に入るか分からないものを売れば、買主が待たされた末に手に入らない事態が起きるからです。例外はその物件を取得する契約を締結しているとき。ただし停止条件付きのものは除かれます。判定の順序は次の図のとおりです。
図5:他人物売買は売れるか
引き渡された物件が契約の内容に適合していなかったとき、売主は責任を負います。この責任について、民法の定めより買主に不利な特約はできません。例外はひとつだけで、不適合を通知する期間を引渡しの日から2年以上とする特約は認められます。
代金を分割で払う割賦販売にも縛りがあります。賦払金の支払が滞っても、業者はいきなり契約を解除できません。30日以上の相当の期間を定めて、書面で催告し、その期間内に支払われないときでなければ、解除も残りの一括請求もできません。
もうひとつが所有権留保等の禁止です。業者は、買主に引き渡すまでに登記などの義務を果たさなければなりません。ただし、代金の30%を超える額の支払を受けるまでは留保が認められます。
①〜④で扱う数字を、覚える順ではなく思い出す順に並べ直しました。解説は入れていません。答えられなかったものだけ、該当のタブに戻ってください。
この章の項目を、状態ごとに数えたものです。タブごとの内訳も出しています。
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本試験と同じ4肢択一です。宅建は50問すべてこの形式で、場面設定を読んでから肢を判定します。最後の2問は「いくつあるか」を答える個数問題で、全部の肢を正確に判定しないと当たりません。